さて、昨年11月、有志10名で発足した日比ビジネスクラブ。その最大の特徴は毎月1回、判で押したように講演会を催すことである。さらに、毎度の講演をやりっぱなしにせず、必ず録音テープを起こして、要約をまとめ、次期講演会までに会報に綴じ込んで発行することである。これはやってみるとたいへんな労働であるが、実に意義深い、新しい運動である。
 最初の講師は株式専門家伊佐治さん(昨年11月度)。次が東南アジア唯一の日本語民間放送WINSの水島社長(12月度)。そして、坂本公認会計士(今年1月度)、と各界を代表される方に講演をお願いしてきた。さて、会報第1号、2号で私は最後の仕上げの段階で総覧するに過ぎなかったが、今回の坂本会計士の講演では最初のテープ起こしから担当していて、根気と時間の要る作業ながら、その分、講師の考え方が手に取るようにわかって、非常に得した気分になった。この調子で、年間12回の講演会を開催し、主体的に要約をまとめてゆくと、どれだけのことが学べるか想像できないほどで思わずほくそ笑んでしまう。なぜか。ここに横たわるのは、ただの情報ではない。人間の知恵である。情報はあらゆるところにころがっているが、知恵は、人の生き方そのものといってよく、これは老婆心なるものを引き出してやらねば獲得できない代物である。これまでの講師の方々は誰も、力を振り絞って、持てる知恵を参集した聴衆と分かち合おうと最大の努力をしていたのが印象的であった。知恵を組織的にシェアできる会。これはフィリピンの日系社会をもう一度、束ねる新しい運動になりうると考える。そもそも日系社会、いかにかよそよそしい空気に満ちていた。むろん、会というもの、誰でも迎え入れれば良いというものではない。当然しかるべき選別をして、会の趣旨にそぐわない人物には入会をご遠慮願わなくてはならないということもあろう。さらに会員同士だからといって、むやみに気を許せばよいというものでもない。けれども、日本人会は企業家のものであって、起業家のものではなく、マニラ会は生活者のものであって、駐在員のものではないという空気があった。日比ビジネスクラブはそうではない。起業家も駐在員も、退職生活者も、その予備軍も皆が学べる懐は深く、間口も広い大きな輪である。講演会も回を重ねるごとに、様々に立場の異なる入会者が増えてゆくのはその証である。私はこの日比ビジネスクラブをあさひ不動産同様、最も大切な宝物として丁寧に扱ってゆきたい。

日比ビジネスクラブ http://www.asahi.ph/jbcp/★学資援助も小学生10名から、ピナツボ灰害の町、パンパンガ州ミナリン町にて開始しました。