今日はバレンタインデーである。それに、ちなんだお話をひとつ、と言いたいところだが、そこは、季節感のないフィリピンのこと、まったく、無関係なお話を。

 私は就寝中にみる夢が好きである。年取るにつれ、見る夢は具体性を増し、より矛盾のないものになってきた。デタラメで支離滅裂な夢はめったに見ない。私の場合、睡眠時間が6時間を超えると、多くの夢を見ることを知っているので、それが楽しみで、日曜日の昼間など、ベッドから出ないで、2、30分おきに見る十以上の夢を楽しんでいる。女房にはあまり云わないのだが、これは半ば私の趣味と化している。

 さて、2月6日にこのコラムに書いた「新車が盗まれた」夢であるが、この夢から、人間の脳は複数の部分で同時に考えることができるとわかる。つまり、この夢のシナリオを書いた脳と、カギをすりかえられ騙される脳が存在するわけである。カギをすりかえられた脳は、最初そのトリックに気付かず、車が消えて初めて、してやられたことに気付いて青ざめるわけで、これを見てほくそえんでいる別の脳が確かに存在するわけである。

 「多重人格症」とか「分裂症」というのは、複数ある脳のなかでも中心的役割を果たしている「自我」と呼ばれる部分が何かのきっかけで統率力を失い、他の補助的脳の部分を制御できない状態にあるのであろう。

 いずれにしても、個人の脳には「複数の部分で」「他方に知らせずに」「異なる事柄を」「同時に」「考える」ことのできる機能があると推定されるわけである。

 脳の不思議については昔、立花隆の「脳死」で初めて興味を覚えたのだが、いまはどの程度、研究が進んでいるのだろう。最近特に酒を飲んでいるときの記憶力が減退してきた。脳についての本でも読めば、多少は改善する、なんてことはないだろうな。