熱帯技術開発協会(TAFTDA)の田鎖浩会長(84歳)から頂いた新聞の切り抜きの内容に同感したので、それを一字一句そのまま転載しました。下線は田鎖先生のものです。

2000年11月18日朝刊

朝日新聞【新世紀を語る】シリーズの?
第4章 日本は
作家 瀬戸内寂聴さん(2000/11/18朝刊)

「若者の触覚 唯一の希望」

----日本の社会を見ていて、これだけは二十世紀で終わらせたいと思うことがありますか?
「いま必要なのは日本の大掃除だと思っているんです。まず政治家や官僚と経済界の癒着を断ち切ること。そして、ここまで日本をダメにした人たちは退場してもらわなければならない。荒廃した教育にも引導を渡す。それができなければ日本は滅びてしまうんじゃないですか」

-----手厳しいですね。
「七十八歳まで生きてきて、こんなに悪い時代、悪い日本になるとは予想もしなかった。どんどん悪くなるばかりです。表面的には平和に見えるけど、底の方は腐っている。それなのに政治家にも経済界の指導者にも、危機感や自覚がない」

-----誰に責任があるのでしょうか。
「すべての日本人でしょう。子供たちが悪くなったと言うけれど、子供は大人の背中を見て育つんです。子供だけしっかりしろと言ったって無理です。大人に緊張感がない。他人のことを思いやる想像力も失っている。自分の国さえよければいい。自分の町さえよければいい、自分の家庭、自分さえよければいいという利己主義が通ると思ってる」

-----なぜ、そんなことになったのだと思いますか。
「敗戦ですべてを失い、失ったものを取り返そうと、戦後の日本人は目に見えるものだけを追いかけてきた。そのために、人間の心や宇宙の生命のような、目に見えないものへの想像力や畏敬の念を失ってしまったんです。昔の日本人は食べ物にも敬けんな感謝の気持ちを持っていた。着るものに対してもそうです。そうした精神文化がなくなってしまった」

-----日本の未来は暗いようですね。
「このままでは二十一世紀の日本はないと思ってました。でも少し考えを変えたんです。最近は対談などでも、できるだけ若い作家や芸術家たちに会うようにしている。どの分野でも、一芸にすぐれた若者は自分をしっかり持っている。権威や肩書きにとらわれず、自分の触覚に触れるものだけを信じている。しかも日本だけでなく、広い視野で世界を見ています。そうした若者が出てきている」

-----そこには希望が持てる、と。
「それが唯一の希望かもしれませんね