今ワシントンではG7が開かれており、米国などは日本やドイツに対し性懲りもなく景気高揚策の実施を求めている。人類が築き上げてきた遺産は何も物質文明だけではあるまい。真善美に代表される文化に対して一体、経済成長というものにどれほどの価値があるのだ。
私が大学時代に出合った「わが亡き後に洪水は来たれ」という言葉は、産業革命以降わずか数百年で主な化石燃料を採り尽くして反省なく、地球を汚染し搾取して子孫に何も遺そうとしない資本主義経済の営みそのものを表している。
最近、日本のいろいろな新興宗教団体がフィリピンに入りつつあるが、彼らの多くもまた化学物質に神性を帯びているはずの人間が汚染されないためにと有機無農薬作物の栽培をしきりに提唱している。物質文明に対する人類のあまりの偏重に不安をかきたてられた人たちの集団である。
人類は人口爆発という異常繁殖により自らはもとより他の全ての生物の生存を脅かしている。日本人の美徳とは本来、よく働き、少なく食べ、よく汗を流し、よく笑い、病気にならないように健全な生活をすることではなかっただろうか。欧米先進国の浅薄極まりない使い捨て文化の布教を神妙な顔で聴いている年配の経済担当官や政治家諸氏の姿をテレビで見るたびに彼らの危機感のなさにめまいを感じる。