「アフガンの子どものために」と海を渡ってから4年8か月。その夢は道半ばで絶たれた。

 アフガニスタン東部で拉致された民間活動団体(NGO)「ペシャワール会」(本部・福岡市)の伊藤和也さん(31)(静岡県掛川市出身)が27日、遺体で見つかった。「つらかったろう」「許せない」――。事件の一報を受けてから1日半、無事を祈った両親や仲間たちは悲しみとやり場のない怒りに包まれた。抜粋(2008年8月28日00時01分 読売新聞)

  伊藤さんのNGO、アフガンから職員引き揚げへ…医師1人残る

 アフガニスタン東部で拉致され、遺体で発見された伊藤和也さん(31)が所属していた民間活動団体(NGO)「ペシャワール会」(本部・福岡市)は28日、アフガン国内で活動している日本人職員を来月中にも帰国させる方針を明らかにした。

 同日中にもアフガン入りする予定の同会現地代表・中村哲医師(61)は1人で現地に残り、アフガン人スタッフと事業を継続するという。

 同会によると、現在、アフガン国内で活動している日本人職員は8人。最近の治安悪化を受けて、当初約20人いた職員の半数を帰国させ、残りの職員も年内には引き揚げる予定でいた。しかし、伊藤さんが殺害された事件を受けて、事業の引き継ぎを早め、中村医師を残して帰国させる方針という。

 一方、伊藤さんの父の正之さん(60)は同日午前、静岡県掛川市の自宅で報道各社の代表取材に対し、「今は家族で静かに待っている。しっかり和也の遺体を迎えたい。本人の希望に沿って送ってあげたい。和也は家族の誇り。胸を張って言えます」とコメントした。(2008年8月28日11時29分 読売新聞)


 NHKでペシャワール中村哲医師の灌漑事業を取り扱ったドキュメンタリーを見る機会があった。世の中にはすごい人がいるものだと思った。今回の伊藤さんの死に際しても現地における活動の方針にはいささかのゆるぎもないと言い放っている。また家族も悲しみの中で、「和也は家族の誇り」ときっぱりコメントしている。信念をもって始めたNGO活動において、例え死を迎えたとしても、誰を責めるわけでもない。それどころか道半ばに倒れた仲間の遺志を継がんと、残された仲間がこれ以上に活動に勤しむ。NGOの活動とは、これでなくてはならない。
 伊藤さんは弾丸を30発も受けて死んでいる。無私の精神で携わった現地で壮絶な死。両親の無念ははかり知れないが、何と立派な息子をもったことか。

 ペシャワールの活動は、同じ日本人として誇りに思い、そして頭が下がる。
伊藤和也さん。私たちは決して君のことを忘れない。