世界経済はサブプライムローンの焦げ付きから数日前には大手証券会社リーマンブラザーズの倒産へと発展し、同社の日本法人の負債は約4兆円とされているが、米国本体の負債額は一体いかほどなのか数字が出てこない。

 さらに保険大手のAIGも危ないなど、いまや世界中の人々が金融危機か、ついには世界大恐慌かと慌てふためき、戦々恐々としている。

 しかしである。

 フィリピンでは株価こそ下落しているものの、不動産の価格が下がるわけでなし、銀行で取り付け騒ぎが始まるわけでなし、いたって平静である。

 思い起こせば96年のアジア通貨危機のときもそうだった。そのときはタイなど発展途上国はもとより韓国までがすったんばったんしていたのに、フィリピン経済は思ったほどの打撃を被らず、政府などは対岸の火とばかりに「アジア通貨危機の被害は最小限。わが国経済のファンダメンタルズは健全そのものである」などとうそぶいていたものだ。

 ところが、それから数年かけて、フィリピン経済はじわりじわりと沈下し、他国が必死の努力の末、立ち直りをみせるなか、そのまま低空飛行を続け、12年経った今でも96年の水準には戻っていないという見方もある。

 経済変化に迅速に反応しない。

 不動産を扱う商売をしている私にはフィリピン人のこの鈍感が気になるのである。