2001年05月

42 いよいよ選挙当日

 今日は選挙の投票日である。弾劾裁判の茶番に憤った市民によるピープルズパワー2により、選挙を経ずして(1月20日)に誕生したアロヨ政権の信任を問う選挙の日である。上院議員の半分の13議席。下院260全議席。他に全国知事、市長、町長、市町議員(副知事、副市長、助役を含む)を選ぶ大事な選挙である。その最大の争点は、アロヨ大統領率いる与党が上院の8議席を獲得して、上院過半数に達することができるかである。

 さて、選挙の下馬評では与党断然有利とされているが、貧困層や華僑社会、イグレシア・キリストやエルシャダイという巨大宗教団体の取り込みに失敗したアロヨ大統領にとって、選挙の結果はなお予断を許さないというところだろう。4月26日のエストラダ逮捕収監に端を発した大衆の抗議集会。そして、5月1日メーデーのマラカニアン宮殿前での警官隊との衝突は、これまで、無視されてきた貧困層の叫びでもあった。その事件を契機に、アロヨ大統領は演説ではピリピノ語で語り掛け、スラムの訪問を繰り返すという貧困層を意識したエストラダばりの選挙運動に転換をはかる。

 Accountabilityという言葉がある。「説明責任」などと訳されている。これまで、政治家たちは特にTVでは有権者に英語で政策を語ってきた。貧困層に難しい政治の話は無用。選挙のとき、はした金とTシャツを配れば彼らはなびくものと彼らを見くびり、説明責任を怠ってきた。貧困層にピリピノ語で語りかけ、彼ら居住区を精力的に訪問したのは、エストラダ大統領だけであった。エストラダは映画スターあがりの政治家というだけではなく、英語の不得意な落第生の出世頭という意味で彼らのアイドルだった。大統領になって2年半、貧困層を救済するという公約はすべて空手形ながら、これだけの人気を維持してきたのは、その親近感も手伝ってのことだろう。

 さて、在住外国人ビジネスマンとしては本選挙におけるアロヨ政権大勝を願うべきなのであろうが、個人的には、与野党勢力伯仲も悪くないと思う。エストラダ以外の政治家は、これまで貧困層を無視し続けてきた。政治家諸君には今回の衝突事件と、芳しくない選挙結果に覚醒してもらって、低所得者層に対し、継続的な救済策を講じてもらったほうが良いのではと思う。

41 理解に苦しむ教科書問題


 中学歴史教科書について、歴史が歪曲されているとして韓国政府から、35箇所について正式に再修正を要求されている問題。教科書の検定とはそれぞれの国が決めるべき問題であって、それに他国が口を出すのは内政干渉である。反対に中国や韓国の教科書では日本のことがどのように記述されているであろう。それに対して、日本政府から修正を促された場合、彼ら国民は不快に感じないであろうか。どのように歴史を認識し、どのように子供に歴史を伝えるか、それは純粋にその国民が自決すべき問題である。その検定のあり方に問題があるのなら、国民自らが、修正すべきものであって、他国から制裁をがざして干渉されるべき事柄ではない。ここまでは自明のことであろう。

 では日本政府としては彼らの間違った「外交認識」についてどう対処すべきであろうか。私ならば、韓国に対し、

 「貴国では、隣国の教科書も勉強なさり、その誤りまでご指摘される。いや、実に勉強熱心でおみそれしました。我国も猛省致しまして、早速、貴国や中国の義務教育における戦後歴史教科書を、全部取り寄せて、日本についての記述が適切であるか、あるいはあったか勉強中です。その結果、日本の歴史認識と異なる部分があれば、貴国や中国に対し、修正意見を求めるとともに、その記述を担当した学者の処分などをお願いする所存であるので少々、時間を頂きたい。」 

 そして、実際に彼らの教科書を取り寄せて猛勉強すべきである。どうせどこの国でも他国になした自国民の所業については甘く記述されている。政治家が過ちを隠蔽、美化しがちなのはどこの国でも同様である。それを双国、または三国で話し合っているうちに、歴史認識とは相対的なものであり、やはり自国民で決めるべきことであるということが、わかってくる。そして子供に伝える歴史教科書の記述がいかに大切なものかが認識されれば十分である。
 さて、皆さん。フィリピンの歴史教科書、読んだことがありますか?日本のことがどのように記述されているかご存知ですか?私も今回、猛省を致しまして、まじめに読んでみるつもりです。

40 略奪罪にはじめての終身刑が下る

 エストラダ大統領に先立って略奪罪で起訴されていた元国税局女性職員マナリリ女史にケソン地裁は、5月4日、終身刑を言い渡した。略奪罪は5千万ペソ以上の公金横領について適用されるものだが、この元会計役職員は2億6千万ペソの税金を着服したとして訴えられていたものである。略奪罪には終身刑か死刑しかないのだが、彼女の場合、その額から終身刑は軽過ぎるものの、死刑では重刑過ぎるというのだろう、「2終身刑」が言い渡された。つまり彼女の人生2回分の終身刑ということである。恩赦などで罪が軽減される場合があるが、その際、彼女は一般の終身刑囚の倍にあたる刑期があるとして区別されるのだろう。41億ペソを着服したとされるエストラダ元大統領にはいよいよ死刑判決が下される可能性が高まってきた。

38 エストラダ支持者の報復=再決起の可能性


 たいへん遺憾ながら、現段階では今回の血のメーデー事件のようなクーデター、政府転覆計画、報復計画が再発する可能性は高い。それはまず、?ホナサン上院議員及びラクソン元国家警察署長という武装勢力を形成できる士官学校出の武人2名がいまだ逃亡・国内潜伏中であること。?エストラダ元大統領がラジオを通じて現状把握ができ、いつでも外部と連絡や声明を発することができる状態に置かれていること。?エストラダ元大統領や野党勢力が潤沢な軍資金を持していること、がその理由である。

 再発を防止するには、?ホナサンとラクソンを逮捕するか、その息の掛かった警察官や兵士を軟禁状態にするなどして、封じ込めること。?エストラダ元大統領が外部情報の取得および外部の人間と連絡ができなくすることが必要であろう。そして、これら措置を少なくとも5月14日の選挙の当落が確定し、国民がその結果を受諾(政府が国民から高支持率を得ること)するまで継続する必要があろう。そして、選挙後はじめての世論調査で国民から高い支持率が得られないのであれば、政権は常にクーデター未遂事件に震える弱い政府になろう。アロヨ大統領は任期期間を通して、不支持層である貧困層との対話を通して、彼らがエストラダ政権に賭けた希望を、自分に委託してくれるよう、最大限の努力をはらうべきである。そのためには、マスメディアにおける演説では必ずピリピノ語などの現地語を必ず英語と併用するなどし、貧困層に語り掛ける必要があろう。

39 今回のクーデター未遂事件の検証


 政府筋が昨日明らかにした今回のクーデター未遂事件の全貌とは、野党内部には『穏健派』と『強硬派』があって、『強硬派』の計画では、マラカニヤン宮殿における混乱に乗じてアロヨ大統領を暗殺。同時に退役軍人記念病院から奪取したエストラダ元大統領を暗殺。ビリヤモール空軍基地では管制塔を占拠。エンリレ上院議員を新大統領に据える。という具体的なものであった。そのいずれも反乱軍内部の情報の混乱から行使に及ばなかった。その謀略の存在を裏付ける膨大な証拠と証人を有するとのこと。またミリアムサンチャゴが穏健派と強硬派どちらに属していたかについて言及されていない。

 エストラダの長女ジャッキーロペスは強硬派の説得に回ったとされているので、結果、未遂に終わったこの事件で、エストラダには、自分の暗殺が彼らの計画に含まれていたことは既知のことだっただろう。それが5月3日に行われたアロヨによる突然のエストラダ訪問の際の彼の従順な態度となって表れたのである。そこで、アロヨはエストラダを「President」と呼び、エストラダはアロヨを「Our President」と呼んだ。TVでも放映されたように、これが、エストラダがアロヨをはじめて「大統領」と認めた瞬間であったし、アロヨ大統領が絶対の自信をもってエストラダを(元)「大統領」と呼んだのであった。さて、反乱宣言による逮捕状なき逮捕の違憲性について既にサンチャゴ議員から、最高裁へ訴えが起されている。群衆は火器を持していなかった。よって反乱は成立しないので、反乱宣言は無効である。よって逮捕状なしの逮捕は違憲である、というのが訴の趣旨である。しかしながら、最高裁は反乱宣言を有効と認めるだろう。今回の未遂事件関係者の情況は次の通り;

■エストラダ元大統領 逮捕済 野党議員から暗殺の標的にされ、政権返り咲きを一時断念(?)
■エンリレ 上院議員 逮捕済 反逆罪容疑。容疑を否認
■マセダ元米国大使  逮捕済 反逆罪容疑から反逆共犯容疑に罪を軽減。近く保釈
■サンチャゴ上院議員 未逮捕 自首説得中
■ホナサン 上院議員 未逮捕 容疑を否認逃亡中
■ラクソン元国家警察長官 未逮捕 元長官時代に冷遇した警察幹部の報復を恐れ、逃亡中

 このように個々の取引により、それぞれに異なる処遇を与えることにより、野党勢力の分断は着々と行われているようである。とすると、エストラダにとって政権返り咲きの夢は潰え、軍資金の反乱勢力への流入は止みそうである。これで反乱勢力の組織的な再決起の可能性は薄くなったといえよう。サンチャゴ上院議員の場合、エストラダ政権下では夫が内務次官、弟が空軍長官(現職)と厚遇を受けていたので、なりふり構わず、エストラダ支持の立場、つまり自己の利益保護、を貫いたのだろう。

 はじめからエストラダ暗殺が野党のシナリオにあることを知っていたなら、巨万の群集は、果たしてマラカニヤン宮殿に殺到しただろうか。死を賭して、棒切れと投石のみで武装警察軍に立ち向かっただろうか。まず投石すべきは、エストラダを支持するふりをしていた野党再選候補議員ではなかったか。彼らには、来る選挙で投票すべき候補者はいなくなった。絶対権力を手中にしたアロヨ大統領が、貧困層の声を汲み上げる努力をしなければ、デモ参加者の死は無駄になる。
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