2002年03月

68 「信用」と「能力」のメダルを勝ちとろう


 先般、邦字紙の報道によれば、65歳の日本人男性が、フィリピンで起業した事業の失敗による生活苦で、11歳になる子供を道連れに、無理心中を図るという事件があった。詳細は不明ながら、自殺というものを禁止しているカトリックのフィリピンで、死ぬ気などないわが子の生命を、「無理心中」という極めて日本的な文化で絶とうという企ては、二月の日比友好祭に湧き立つ日本人社会に少なからぬ衝撃を与えた。
 大企業の場合、結果が出せない、トラブルに見舞われるなどした駐在員は、企業利益防衛のために、任を解かれて姿を消してゆく一方で、外国で裸一貫、腕一本に頼る個人起業家に逃げ場はない。とりわけこのフィリピンでは、中小零細企業が資金の借り入れを起こすのは、ほとんど不可能という事情から、上述のような事件には身につまされる思いがするのである。
 しかしながら、フィリピンは、高級ビレッジの豪邸で生活する金持ちはほんの一握りで、中流階級は少なく、かなりの割合の庶民が畳2~4帖ほどの生活を余儀なくされるというお国柄である。多少の生活難を理由に、いたいけな子どもの命まで奪おうとは、日本人の「エゴ」と「命に対する不遜」と断じられてもやむを得まい。
 さて、日本はこの戦後最悪の経済不況と構造改革でいまや年間3万人以上の自殺者を出す、自殺大国である。これは、人生への絶望感や残された家族への保険金支払いを当てにしてのことであろうが、一方で、ここフィリピンでは、生活苦による自殺件数は極めて少ない。
 よって、この国における「無理心中」は異例中の異例の事件と云わざるを得ず、結局、これを企てた彼は、物質的には貧しくても、精神的には豊かなフィリピン社会の性格を理解しようとしていなかったのではないだろうか。併せて、彼には現状を打開する策も、安心して相談できる日本人の仲間もなく、徐々に追い詰められて、わが子に手を掛けるに至ったのであろう。日比ビジネスクラブはそんな彼の傍らにこそ存在すべきであった。
 そもそもフィリピンにおける日本人とは「有能なれど、信用ならぬ」起業家と「信用はできるが、能力に欠ける」起業家が、大半を占めると云われる。ゆえに「信用」と「能力」、二つのメダルを与えられる起業家はまことに少ないとの批判は重く受け止めねばなるまい。それゆえ、日比ビジネスクラブとはこの二つの誇りあるメダルを手にする起業家を発掘するとともに、優れた事業家を育くむ集団でありたい。そうした努力が、やがては日本人の自殺者を防ぎ、フィリピンで生活する日本人に、より快適な環境を提供できると信じるからである。
          (本文は日比ビジネスクラブ3月度会報に挨拶文として掲載したものです)

67 女房孝行と酒乱

 私は昔から酒好きである。親父は若い頃から酒を飲まなかった。弟はビール2杯で寝てしまう。一方、私はいくらでも飲んだ。ただただ飲んだ。私の酒好きは劣性遺伝である。
 飲み過ぎて意識がなくなることはよくあったが、最近ひどくなった。皆で酒の席で飲んでいるときことは覚えているのだが、うちに帰ってからのことがまるで記憶にない。うちに帰ってから物を投げる。大声で歌をがなる。女房に当たる。
 これに、女房は14年間耐えてきた。彼女は何度も私に飲み過ぎないようにと、注意をし、頼んだが私が聞き入れることはなかった。親父は4人の子を育て、弟も4人目の子供をもうけ、円満家庭を築いた。私は子はなく、唯一の家族たる女房を冷遇している。またしても劣性遺伝である。
 昨日女房に云われたのは、
「あなた昨夜、自分が何をしようとしたか覚えている?家に食べ物がないとわかって車を運転しようとしたのよ。私がお願いします、お願いしますと何度も頭を下げて、車から降ろしてひきずって寝かしたのよ。その泥酔状態で、近所の車に次々にぶつかったらどうなると思っているの?事故で死ななくても、フィリピンの人に殴り殺されるわよ。」
 これで、すっかり眼が覚めた。家の近所はベンツにジャガー、BMW、ランドクルーザー・・・・。高級車であふれている。
テレビ・新聞に良く顔を出す著名人もいる。こんなところで飲酒運転でトラブルを起こして、新聞にでも載ったら、会社はどうなる?日比ビジネスクラブはどうなる?おい、おい、どうする。ぞーっとした。
 何よりも、考えなくてはならないのは、自分の女房のことである。自分はこのフィリピン人女房に惚れて、共に生きたいと思って、結婚したのだ。その女房はこれまで、私を守り、酒乱に我慢に我慢を重ねていたのだ。手をあげないことだけが救いだった。これで事故でも起こせばあいそもつきて、離婚の危機も迎えよう。家の家系でも彼女の家系でも崩壊家庭は例がない。離婚でもって、劣性遺伝は確定してしまう。これはまずいことだ。
 酒乱がひどくなる。要するに、体力が落ちたのだ。年を取ったのだ。これまでのようにはいかない。私はまだいろいろやり残したことがある。40代もあと9年しかなく、酒によるトラブルなどで足踏みしている間はない。
 人に迷惑をかけない。女房孝行をする。当たり前だが、これがまず大事なことだ。
 うちの女房に聞いた。
「俺は深酒さえしなければいい夫になれるかな」
 年下の異邦人女房に、またひとつ、大きな恩をいただいた。
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