フィリピン国家・社会

335 農地改革法とアキノ・ファミリー

私たちがいつも利用するマニラ国際空港は、その地で暗殺された故ベニグノ・アキノ(BENIGUNO AQUINO)上院議員の愛称ニノイ(NINOY)にちなんで「ニノイ・アキノ国際空港」と名づけられている。

暗殺から数年後、その妻の故コラソン・アキノ(CORAZON AQUINO)女史はマルコス大統領を追放(実際は米軍による実質的誘拐)して、大統領に就任した。さらに現在の大統領ベニグノ(ノイノイ)・アキノ3世(BENIGNO AQUINO III)はその二人の息子にあたる。

ちなみに「アキノ(AQUINO)」という名であるが、私たちは類似の日本人姓「秋野」からといいたいところだが、故西本至神父によるとアキノはカトリック・ドミニコ会のスコラ哲学の代表格たるトマス・アクイナス(Tomas=Aquinas)の姓に由来するとのこと。 

さて、庶民から絶大なる人気を誇ったコラソン・アキノ元大統領ではあるが、一方ではフィリピン全土の大地主から「厚顔無恥の人物」として嫌われている。

というのも、彼女は大統領就任後、直ちに「農地改革法」を立法化し、大地主に対し、所有する農地を小作人に公平分配せよと迫り、個人は4ヘクタールまでしか農地所有できないこの法律により、多くの大地主に農地を失なわせた。(私の友人も田畑を分配させられアキノを「タワケ者!」と吐き捨てる。)

にも拘わらず、アキノ女史の実家であるコファンコ家は、タルラック州にルイシタ荘園と呼ばれる巨大農園を所有し続けている。「農園の株式化」という法の抜け道を利用し、小作人には農地の代わりに証券を与え、一族はその全株式の70%を所有するという方式により、荘園支配を継続しているのだ。

それに抗議する小作人組合のデモ行為に対し、政府の犬である警官隊をもって迎えうち、組合側に7名もの犠牲者を出してきたという経緯もあり、これが「厚顔無恥」と非難されるゆえんである。

実は、昨日、最高裁大法廷は、ルイシタ荘園の農地を小作人に分配せよという命令を出した。アキノ政権下でコファンコ家有利の判決が出なかったことに一定の評価もある。(*1)

しかし、最高裁判所判事は15人中、長官を含む12名までがアロヨ政権下で任命された反アキノ陣であり、コファンコ家に有利な判決が出ようはずがない。

しかし、少なくともこの判決なものであり、母の七光りで大統領に就いたアキノ大統領には、母の尻拭いをしてもらいたい。

つまり、アキノ大統領にはこの最高裁判決に対し、異議申立などせず(*2)唯一最悪の汚点であるコファンコ家の「農地改革破り」に終止符を打ち、速やかに小作人に農地を分配していただきたい。


*1 最高裁判所判事は15名。そのうち長官を含む12名はアロヨ前大統領に任命された判事。
*2 フィリピンでは、最高裁判決に対し日本と同じ「異議申立」以外に「再考願い(Motion for Reconsideration」もありだ。
   司法の名目は日本と同じ三審制なのだが、日本と違い、三振してもアウトになるとは限らない。

333 アロヨ元大統領逮捕!

マニラ新聞2011年11月19日付

ようやく・・・というところである。

これまで、アロヨ元大統領が訴追逃れ・逮捕逃れを目的に、退任直前に最高裁長官を任命してみたり、大統領経験者としては異例の下院議員になったり、大病と偽り、二度にわたり亡命を画策してみたり、なりふり構わず行ってきた工作の数々に義憤を感じていた者は多いだろう。極めつけはアロヨ大統領誕生の立役者となりその後もアロヨ政権を支え続けてきたレーエス元国防相の訴追中での自殺。

アロヨ大統領の父親、故マカパガル大統領は平民宰相と慕われた立派な政治家であった。その七光りを受けて政権についたアロヨ大統領は、エストラダ元大統領と同様フィリピンを食い物にした。

アロヨ大統領が政権にあったとき、英字新聞のあるフィリピン人コラミストが皮肉な論評を載せていた。

「フィリピン人はうそつきである。なぜなら大統領がうそつきだからである。よってフィリピン人は皆うそつきである。」

同国民による痛烈な批判。

エストラダ氏に続いて、アロヨ氏。2期連続で大統領が汚職で逮捕収監されるという醜聞。

特にアロヨ元大統領に関しては、

父親故ディオスタド・マカパガル大統領の栄誉を汚し、フィリピン国民の名誉を汚し、政権を支え続けたレーエス元国防相を死に追いやった。またあからさまな大統領選挙不正で、自身が大統領に当選。落選し、失意のまま脳梗塞で死亡したフェルナンド・ポージュニア元大統領候補という犠牲者のことも忘れてはならない。

今日、多くの直接的犠牲者の遺族らが、アロヨ逮捕というニュースを犠牲者の霊前に報告するはず。

彼女だけがぬくぬくと生きていてよいはずはない。

235 スカイウェイ(高速道路)から料金所が消えた!?

フィリピンにはサウススーパーハイウェイという、マニラとバタンガス方面を結ぶ南ルソン高速道路があるが、その上部や右左舷を通るスカイウェイと呼ばれる短区間ながらサウススーパーよりさらに通行料金が高額の第二高速道路がある。

以前は昨年まではビクタンというわずかな8kmほどの距離までしかなかったのが、スーカット、アラバン迄と次々と伸びた。

料金所がなくなったというのは正しい表現ではなく、マニラ側の料金所がなくなったということである。

これまで新高速道路スカイウェイの問題点は二つあり、ひとつは余りの短区間ということ、そして、料金所付近でひどいときは1時間も渋滞するということだった。

それが二つとも解消した。

今や出勤時ビクタンからe-パスでバーをくぐるってスルリと乗り入れ、そこで料金は自動的に引き落とされ、高速を出るときにはゲートもなく渋滞もない。

また、反対にマニラから帰途の際はゲートなしに乗り入れ、高速を出るところの料金所でe-パスで自動的に料金が引き落とされる。

つまり、区間中、あるいは乗り入れる際にも一度も完全停止することがなくなった。お陰で私の出勤時間は25分から18分ほどに短縮した。

フィリピン人もやればできるじゃない。
といっても運営会社はインドネシアの財閥である。

余談だが、もう少しするとサウススーパーハイウェイとバタンガスの港まで到達するスターハイウェイという高速道路が完全に連結される。そうすれば、ルソン島にもようやく近代的道路網が完成する。

232 12分の一を消化して

1月も終わりに近づき、瞬く間に今年の12分の一が消化されてしまいました。

今年のフィリピンでは大統領選挙を含む統一選挙があります。

6年に一度、悪徳政治家どもが民衆から掠め取った預貯金を一斉に吐き出す好景気が期待される年なのです。

既にTVやラジオでは正副大統領選候補や上下議員候補の宣伝合戦が盛大に繰り広げられております。

昨年は2連続大規模台風の襲来と世界景気の後退で辛酸を舐めたフィリピンですので、市民は皆不景気を吹き飛ばすような変革を期待しています。

何かが起こるでしょうか。

223 フィリピンの輸出額41%減の記事

 3月11日のマニラ新聞は「フィリピンの1月の輸出額前年比41%減に悪化」の記事が一面トップを飾った。

 なかでも自動車業界の米ともいわれるワイヤーハーネス、つまり自動車の加工電線(これはフィリピンでも主要な産業のひとつなのだが、)の落ち込みが激しく、実に前年比60.3%減という。米国の三大自動車メーカーの販売台数がここ数ヶ月50%~60%と激減しているその影響を如実に示している。

 トヨタが開発し、様々な産業界に広がったかんばん方式は在庫を最小化し、GPSを駆使した輸送機関との連携によるジャストインタイムの芸術的システムだが、それはまた少しでも販売が翳るとととたんに発注延期や中止、中小零細の部品メーカーが存亡の危機に瀕することを意味する。

 便利とは不便とまさに表裏一体で、旅先におけるインターネット接続不能の不便やストレスを語る前に、今日突然、長時間停電しただけで、産業から娯楽まですべての活動が麻痺してしまうのである。

 そして資金不足は、人体で言えば血液の不足を指し、景気という血管中の流れが滞ると産業全体に様々な疾患が広がり、一時でも循環がストップするとそれは死を意味する。現在の経済不況とはこれまで勢いよく血液が流れて、血管も拡大していたのが、突然、底の方にしか流れなくことだ。

 勢いよく資金が流れていたときには長者も出現していた。

 私のお客様に、毎日フィリピンの高級リゾート、ボラカイの砂浜に寝そべってノートパソコンでネットで株取引をするのが夢であり、そのためにボラカイに邸宅を購入された。

 国際間取引で冨を築き、海外リゾートに邸宅を購入、ネットを利用して日本の株取引が続けられるおまけ付の羨ましい第二の人生である。

 グローバル化した資本主義経済は地球の資源を最大に活用し、より多くの人々に仕事を与え、資本家には莫大な富の蓄積をもたらすべき優れた経済システムである。
 
 これまではグローバル化は経済のオリンピック化でまさに零細企業も世界市場の荒波に駆り立てることが問題であった。

 しかし、現在の経済危機は大半の経済人を敗者とし、失業者を溢れさせてしまう異常事態である。

 経済のグローバル化とネットにおける情報の平等化の現在では投資が一部に集中し、そして一気に引いてしまう。

 セーフティーネットの強化が必須条件となり、弱者救済のできる行政を実現するには経済規模に比した予算が必要となろう。

 そのためにもはや比較的小さな政府では対応できず、経済規模なりの大きな政府の存在も容認せざるを得ない時期を迎えているのかも知れない。
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