「無犯罪歴証明書」という言葉があるなら「事業無計画書」という言葉があってもいい。

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会社設立や不動産のあっせんなんて仕事をしているといろいろな問い合わせが入ってくる。

疲れるのは、会ったこともない私に筆談でわけのわからない夢を語り、くだらない質問をたらたらしてくる輩だ。

名前も素性もほとんど明かさずにどんどん聞いてくる。こっちはネットに卒業した小学校から一切を公開しているから「匿名者と公人の対話」である。

チョー初心者的質問と荒唐無稽な「計画」というか、「無計画」について聞いてくる。それでも我慢して丁寧に返事をしていると、調子に乗ってまたいろいろ聞いてくる。終いには面倒くさくなって、

「あなたも事業家のはしくれなら、もう少し計画を煮詰めてから持ってきてください。我々の仕事はそれからです。」

 と書いて送ると、

「煮詰まったら役所にもっていく。煮詰まっていないから聞いているのだ。・・・もう頼まないからいいです」

と逆切れをする。匿名だからいくら相手を攻撃しても平気なのだ。しまった。また匿名者に真摯な態度で接してしまったと親切な自分に反省しつつも、本当のところ、

「あのー、答えるのが面倒くさくなるほどの無計画ですね。フィリピンでの事業はいばらの道。そんな甘いものではないですよ。日本と違って安い資本で始められるからと安易にスタートしても火傷するだけですよ。地雷踏んじゃいますよ」

と進出の断念(という大げさな言葉を使うほど考え抜いているとは思えないが)を示唆しているのだ。

誰でもそうなると思うが10年も進出支援の仕事をしていると少し対話をしただけで、相手の力量は値踏みできるようになる。レベルの高い事業家のハナシに「とんでもない達人がいたもんだ」と舌を巻くこともあれば、極めて実現性の低い計画「事業無計画」に失望させられることも度々ある。

でも相手から批判を受けたら切れるのもいいけれど、少しは気にした方がいいですよ。だいたいコケルまで誰も言ってくれないんだから。

「すみません。お兄さん。ちょっと事業無計画書、見せてくれますか」