日本の狂牛病については遅ればせながら、感染源と思われる肉骨粉の輸入・製造・販売の全面禁止をし、生後30ヶ月未満の子牛についても、完全検疫をするという厚生省の強い方針に決まったようです。これがとりあえずは狂牛病パニックから日本の肉牛業界が立ち直る契機になってくれると良いのですが、私の主張する、英国への抗議と損害賠償の請求の議論は沸き上がらないのが残念です。

 さて、米国ではアフガン空爆を開始後、日を経ずして発生した「炭そ菌テロ事件」により、これまでに13名の感染者が報告され、うち1名が死亡しています。標的になったのはNYの有力テレビ局、フロリダ州のタブロイド版発行会社、ネバダ州のソフト製作大手となっており、いずれも封書に炭そ菌を仕込んで送りつけるという手口が共通しています。しかし、炭そ菌を比較すると、組成は異なり、致死性のないものが含まれるなどから、これらが同一グループによる犯行か、オサマ=ビン=ラディンの一味によるものかなど特定できていません。

 しかしながら、ここで、みるべきは米国政府の対応の迅速性と的確性です。この炭そ菌騒ぎが再び全米をパニックに陥れようとするところ、トンプソン厚生長官は、早々と声明を出し、これまで200万人分しかない「シプロ」という抗生物質の備蓄を増やし、1200万人の治療ができる体制に早急に整えると断言しました。さすが、国家よりも前に個人と社会を優先するという建国の建前を完全実行できるアメリカ合衆国のオールマイティー(全能)をそこにみた思いがしました。この炭そ菌騒ぎは、アフガン空爆に対する報復、または攪乱作戦である可能性が高く、戦争反対を唱える市民の声が高まるところです。このように、政治家の決定には必ず負の側面が伴います。しかし、下した決断により損失を被る市民に対するケアを忘れないこと。これこそがステイツマンに求められる資質です。資本力、技術力、人材、政治家の責任感、これらが全て揃った米国だからこそ、この対応ができるのです。米国に不足のものは何一つないということをまた証明した形となりました。

 日本は、米国の半分くらいのことができる国に育つと良いのです。日本の警察庁は対岸のこの騒ぎで、「NBCテロ捜査隊」なる特別班をこしらえ、地方自治体や医療・保健機関と連携して、生物テロ攻撃の兆候を察知できる体制を整えるなどととぼけたことを申しております。それよりも、炭そ菌に感染した市民に対する治療用の抗生物質を各県の医療機関に配布すること。感染したときの症状と対処の方法について、市民と医師に対して啓蒙活動を徹底することが優先されるべきではないでしょうか。でなければ、日本における最初の感染者は人柱としていけにえにするつもりと云われても仕方ないでしょう。だいたい、「NBCテロ捜査隊」という命名に、事態の重大性の認識が足りないといわざるを得ず、パニックを恐れず、「生物・化学テロ対策本部」などとすべきです。でないと今後、考えられる放射性物質を仕込んだ爆弾攻撃などに備えられないでしょう。今すべきことは、連絡網の確立などではなく、感染防止のための教育と治療体制の確立です。

 さてと、それではフィリピンではどうでしょうか?資本力、技術力、人材、政治家の責任感。どれをとっても足りないものばかり。生物・化学テロが発生したときは諦めてください。ただ、英国と日本を差し置いて生物兵器使用のターゲットになることは可能性として低いような気がします。なぜって?イスラム教徒が街に沢山いるし、何一つ満足なものがないフィリピンを叩いても世界で称えられそうにないからです。でも・・・。誰か防毒マスクを売っている店とか、「シプロ」という抗生物質を備えた病院名などをご存知の方がありましたら、後でこっそりメールなどで教えてください。

「NBCテロ捜査隊」について、日本政府は、「NBC(核・生物・化学)兵器」対策が念頭にあって命名したのであり、、全く偶然、その頭文字と今回の事件の会社名が一致したのだそうです。(偶然って恐ろしいですね。)読者の方からご指摘がありました。ありがとうございます。(10月26日書き込み)