今日は東南アジア唯一のキリスト教国フィリピンにとって最も大切な日、クリスマスイブである。家族が水入らずで集い、キリストの生誕を祝うとともに一家の繁栄と無病息災を祈る日である。我が家でも女房の親兄弟姉妹やその子供達が勢揃いしてレチョン(豚の丸焼き)など日頃出せない豪華料理に舌鼓を打った。
ところでソーシャルウェザーステーションによるとフィリピン人の42%がサンタクロースの存在を信じているという驚くべきアンケート記事がマニラ新聞(12月24日付)に紹介されていた。最貧困層では48%が信じているとのこと。その数字の高さは信じがたいがフィリピン人がクリスマスに対し格別の思いを持っているのは確かであろう。
こんな日に事もあろうにクリスマスツリーのイリュミネーションからの出火で焼け出された家がある。聞くところによると飾っていたツリーからの火は瞬く間に家全体に広がり、家族は4匹の犬と新車一台を持ち出すのがやっとだったとか。私の住んでいる住宅地内で我が家からわずか2分のところの話である。
その数日前のレイテの土砂崩れ、洪水の被害では死者、行方不明者が250人に達している。年に一度のクリスマスイブを前にこのような悲劇が起こっているのである。
けれどもフィリピンの人々は神やキリストを見捨てない。クリスマスの直前に自然災害で大勢の死者が出たり、イブの夜にツリーで火事になったり、時として神に見放されたり、裏切られることはあっても、彼らは決して神を見捨てない。
人々の信心は多少の矛盾も飲み込んでしまうほど強いものなのだろう。無策のエストラダ元大統領になぜ貧困層が望みを託すのかわかるような気がしてきた。