2006年07月

168 車の帰還

 一昨日、一台しかない愛車がようやく修理から戻ってきた。スチールの看板を踏んづけたまま100m引きずってトランスミッションが壊れたのが確か5月7日のことだったから、2ヵ月半余のことである。わが第一子の出産には間に合わなかったがその退院日の朝がちょうど車の退院で、わが子をわが車で引取ることができたのでよしとしなくてはならないだろう。

 トランスミッション一式の取替えに25万ペソの見積もり。巨額の出費にフォードの推薦で加入していたブリデンシャル銀行系の保険屋はなかなか修理を許可してくれない。すったもんだで22日間が過ぎ、ようやく修理開始のサインがでた。しかし今度は部品の調達問題。輸入車なので部品は米国から船での取り寄せるしかないということになった。その輸入にまた一ヶ月以上待たされて、部品到着後、修理期間はわずか10日間。自己負担額は7000ペソ又は修理総額の1%の免責分、プラス3年落ちにつき部品代負担額30%、計63000ペソということだった。

 フィリピンの自動車保険では修理に部品取替えが生じたとき新車から3年未満だと自己負担ゼロだが、3年以上だと30%、5年落ちだと50%の自己負担となる。これは東京海上や三井住友系の現地保険会社でも同様だ。日本と同じではない。

 というのも日本と同じシステムにするとフィリピン人は例えば10年落ちのボロ車を買ってきて保険に入り、事故証明を捏造して、ボディーからエンジンをすべて新品に取り替えてしまうので保険制度が崩壊するからだそうだ。さすがはフィリピン人。保険屋も大変なのである。

 車の入院と妻子の退院が重なり、我が家の家計簿は火の車だ。少ない貯金もすべて使い果たし、今週からまたせっせと商いに勤しむこととしよう。

167 ラブレター

僕の子供たちへ

 僕の子供たちよ。君たちがこの手紙を読む頃、君たちは小学校
2、3年生になっているだろうか。
 僕はこの手紙を君たちが生まれる前に書いているんだよ。

 僕は実は君たちのお母さんと一緒になる前に他の人と結婚していて、
もしかするとこの手紙は君たちへではなく、前のお母さんとの間にできた
別の子供たちへ宛てて書いているはずだった。

 でも僕はそのひとと子供を作りたくなかった。君たちのお母さんには
ふさわしくないと思ったからだ。

 もし僕がそのひとと子供を作っていたら、君たちは生まれなかった
はずだよ。なぜなら僕たちの社会では自分の奥さん以外の女性との間
に子供を作ってはいけないきまりになっているからだ。

 僕がその女性と別れて君たちのお母さんと一緒になったから
君たちが生まれた。僕は君たちのお母さんをとても愛していて、
どうしても僕とお母さんとの間に子供がほしかった。
そうして君たちが生まれたんだよ。

 僕は君たちを僕の子供に選んだ。それがとても嬉しい。

 でも僕は君たちのお母さんをまだ選んでいない。君たちのお母さんに
ふさわしいひとをまだ選んでいないんだ。

 君たちに「良かった。お父さん、立派なお母さんを選んでくれて
ありがとう」。そう言ってもらえるようなお母さんでないと君たちに怒られる
と思った。だからまだ選んでいないんだ。

 間違って君たちのお母さんにふさわしくない人を奥さんに選ばない
ように君たちには未来から見守っていてほしい、そう思ってこの手紙を
書いた。僕は君たちをとても愛している。お母さんを愛しているように。

 お母さんにこの手紙のことを聞いてごらん。お母さんはきっとこの手紙
のことをよく覚えているはずだよ。お母さんはこの手紙をずっと前に見て
いるんだ。君たちが生まれる前に。

 そうだよ。この手紙は君たちのお母さんに結婚の申し込みをするときに
読んでもらった手紙なんだ。お母さんはこの手紙を読んで、ゆっくり考えて
そんな僕との間に君たちを生みたいと思ったから僕と結婚したんだ。

 僕とお母さんは君たちのことを、結婚する前から、生まれる前から愛して
いるんだよ。これから君たちはいろいろな問題につきあたると思うけれど
そんな僕たちがいつも見守っていることを忘れないでいてほしい。


                   ooOoo

 この手紙は昨年6月頃、今の妻へのラブレターとして書いたもので、これを英文に直して彼女に渡しました。彼女は私のプロポーズを受け入れ、10月に入籍、12月に挙式、そして約1年後の今週、待望の第一子が生まれました。前妻との間に16年間、子のなかった私と結婚するに当たって彼女には「子供のない人生を送ることになるかも知れない」という相当な覚悟があったようです。
 わが子の生まれた幸せをかみ締めながら、その幸運をもたらしてくれたわが妻への思い、そして生まれぬかも知れぬ子への思いを忘れないよう、強く明るく前向きに生きていこうと思いました。
記事検索
プロフィール

manila_no_kaze

タグクラウド
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ