フィリピン国家・社会

何年ぶりかで日比ビジネスクラブ講演会を開催した。

S__20029443
S__20029444

  マニラ新聞元編集長、元共同通信記者、ジャーナリストの石山永一郎氏による

   「ルフィーの闇、フィリピンの輝き」

という、日本で話題になった日比両国を股にかけた特殊詐欺及び暴行殺人事件について、貴重なご講演をいただいた。  

 確かに失われた30年の間にガラバゴス的発展を遂げる特殊詐欺の手口のありようと、一方で、年率7%を超える速度で高度成長中するアジアの昇り竜、フィリピンの経済社会との対比は、パンデミック前は、年に十回以上日比を行き来していてその様子を観察していた自分には、感じ入るところがあった。

  とはいいながら、実は、問題はそこにはなかったのである。  

 講演中は、モニターへのAIRなんたらでの映し出していたレジメは、接続の不良でプツプツと途切れて、幾度となく接続のやり直しを余儀なくされていたし、導入したばかりの音響機器の調整不足もたたって、何年かぶりの講演会は、ちょっと散々で、講師にもご迷惑をおかけした。

 何せ、主催者の私がとても集中して聴ける状態になく、講演後に参加の皆さんからの率直な感想をお聞こうと思っていたのが、そのアンケートの実施もネットの接続不良で潰えたのだった。

 極めつけは、受付の妻(フィリピン人)が自己の登録するSNSを、講演直前に何者かにより乗っ取られたこと、講演が終わる頃には、義理の兄弟や私たちの従業員が、妻からのなりすましメッセージにコロッと騙されちゃったこと、そして、それぞれ数万ペソという(質素な私たちには)大金の振込み詐欺被害に遭ってしまうとという(自分には)前代未聞の事件が、講演会の裏で勃発していた、のである。

  講演が終わると同時に、携帯電話を握りしめた彼女が脱兎のごとく歩み寄り、私のI-Padを掴んでの「アカウント取り戻し作業」。そして私もただただその支援に振り回されて、せっかく集まった参加者とその後の懇親会で歓談する時間もなく、結果、お帰りの際に一言挨拶を交わすのがやっとという哀れな有様になってしまったのである。

  しかし、待てよ、ものは考えようだ。

  そうだ、それって、すごいことではないか。

  なにしろ「振り込め詐欺」についての講演会中に起きた「振り込め詐欺事件」なのである。

  実に「大胆不敵な犯行」と言えなくはなかったか。

  そうだ、懇親会の最中に、立ち上がって、「振り込め詐欺」の二重奏を語るべきであったのではないか。

  というのは冗談で、まあ、なんだろう。実に「間抜け」な出来事だった。冷静になって昨日のことを振り返ると、私の一生で、偶然とはいえ、こんな間抜けな二重奏は、これまでになかったような気がする。

  そうだ、この日は、我が人生で、この久々のブログにも特筆すべき、散々な一日であったのだ。

  と久々のブログに書く、私であった。
 
 

335 農地改革法とアキノ・ファミリー

私たちがいつも利用するマニラ国際空港は、その地で暗殺された故ベニグノ・アキノ(BENIGUNO AQUINO)上院議員の愛称ニノイ(NINOY)にちなんで「ニノイ・アキノ国際空港」と名づけられている。

暗殺から数年後、その妻の故コラソン・アキノ(CORAZON AQUINO)女史はマルコス大統領を追放(実際は米軍による実質的誘拐)して、大統領に就任した。さらに現在の大統領ベニグノ(ノイノイ)・アキノ3世(BENIGNO AQUINO III)はその二人の息子にあたる。

ちなみに「アキノ(AQUINO)」という名であるが、私たちは類似の日本人姓「秋野」からといいたいところだが、故西本至神父によるとアキノはカトリック・ドミニコ会のスコラ哲学の代表格たるトマス・アクイナス(Tomas=Aquinas)の姓に由来するとのこと。 

さて、庶民から絶大なる人気を誇ったコラソン・アキノ元大統領ではあるが、一方ではフィリピン全土の大地主から「厚顔無恥の人物」として嫌われている。

というのも、彼女は大統領就任後、直ちに「農地改革法」を立法化し、大地主に対し、所有する農地を小作人に公平分配せよと迫り、個人は4ヘクタールまでしか農地所有できないこの法律により、多くの大地主に農地を失なわせた。(私の友人も田畑を分配させられアキノを「タワケ者!」と吐き捨てる。)

にも拘わらず、アキノ女史の実家であるコファンコ家は、タルラック州にルイシタ荘園と呼ばれる巨大農園を所有し続けている。「農園の株式化」という法の抜け道を利用し、小作人には農地の代わりに証券を与え、一族はその全株式の70%を所有するという方式により、荘園支配を継続しているのだ。

それに抗議する小作人組合のデモ行為に対し、政府の犬である警官隊をもって迎えうち、組合側に7名もの犠牲者を出してきたという経緯もあり、これが「厚顔無恥」と非難されるゆえんである。

実は、昨日、最高裁大法廷は、ルイシタ荘園の農地を小作人に分配せよという命令を出した。アキノ政権下でコファンコ家有利の判決が出なかったことに一定の評価もある。(*1)

しかし、最高裁判所判事は15人中、長官を含む12名までがアロヨ政権下で任命された反アキノ陣であり、コファンコ家に有利な判決が出ようはずがない。

しかし、少なくともこの判決なものであり、母の七光りで大統領に就いたアキノ大統領には、母の尻拭いをしてもらいたい。

つまり、アキノ大統領にはこの最高裁判決に対し、異議申立などせず(*2)唯一最悪の汚点であるコファンコ家の「農地改革破り」に終止符を打ち、速やかに小作人に農地を分配していただきたい。


*1 最高裁判所判事は15名。そのうち長官を含む12名はアロヨ前大統領に任命された判事。
*2 フィリピンでは、最高裁判決に対し日本と同じ「異議申立」以外に「再考願い(Motion for Reconsideration」もありだ。
   司法の名目は日本と同じ三審制なのだが、日本と違い、三振してもアウトになるとは限らない。

333 アロヨ元大統領逮捕!

マニラ新聞2011年11月19日付

ようやく・・・というところである。

これまで、アロヨ元大統領が訴追逃れ・逮捕逃れを目的に、退任直前に最高裁長官を任命してみたり、大統領経験者としては異例の下院議員になったり、大病と偽り、二度にわたり亡命を画策してみたり、なりふり構わず行ってきた工作の数々に義憤を感じていた者は多いだろう。極めつけはアロヨ大統領誕生の立役者となりその後もアロヨ政権を支え続けてきたレーエス元国防相の訴追中での自殺。

アロヨ大統領の父親、故マカパガル大統領は平民宰相と慕われた立派な政治家であった。その七光りを受けて政権についたアロヨ大統領は、エストラダ元大統領と同様フィリピンを食い物にした。

アロヨ大統領が政権にあったとき、英字新聞のあるフィリピン人コラミストが皮肉な論評を載せていた。

「フィリピン人はうそつきである。なぜなら大統領がうそつきだからである。よってフィリピン人は皆うそつきである。」

同国民による痛烈な批判。

エストラダ氏に続いて、アロヨ氏。2期連続で大統領が汚職で逮捕収監されるという醜聞。

特にアロヨ元大統領に関しては、

父親故ディオスタド・マカパガル大統領の栄誉を汚し、フィリピン国民の名誉を汚し、政権を支え続けたレーエス元国防相を死に追いやった。またあからさまな大統領選挙不正で、自身が大統領に当選。落選し、失意のまま脳梗塞で死亡したフェルナンド・ポージュニア元大統領候補という犠牲者のことも忘れてはならない。

今日、多くの直接的犠牲者の遺族らが、アロヨ逮捕というニュースを犠牲者の霊前に報告するはず。

彼女だけがぬくぬくと生きていてよいはずはない。

235 スカイウェイ(高速道路)から料金所が消えた!?

フィリピンにはサウススーパーハイウェイという、マニラとバタンガス方面を結ぶ南ルソン高速道路があるが、その上部や右左舷を通るスカイウェイと呼ばれる短区間ながらサウススーパーよりさらに通行料金が高額の第二高速道路がある。

以前は昨年まではビクタンというわずかな8kmほどの距離までしかなかったのが、スーカット、アラバン迄と次々と伸びた。

料金所がなくなったというのは正しい表現ではなく、マニラ側の料金所がなくなったということである。

これまで新高速道路スカイウェイの問題点は二つあり、ひとつは余りの短区間ということ、そして、料金所付近でひどいときは1時間も渋滞するということだった。

それが二つとも解消した。

今や出勤時ビクタンからe-パスでバーをくぐるってスルリと乗り入れ、そこで料金は自動的に引き落とされ、高速を出るときにはゲートもなく渋滞もない。

また、反対にマニラから帰途の際はゲートなしに乗り入れ、高速を出るところの料金所でe-パスで自動的に料金が引き落とされる。

つまり、区間中、あるいは乗り入れる際にも一度も完全停止することがなくなった。お陰で私の出勤時間は25分から18分ほどに短縮した。

フィリピン人もやればできるじゃない。
といっても運営会社はインドネシアの財閥である。

余談だが、もう少しするとサウススーパーハイウェイとバタンガスの港まで到達するスターハイウェイという高速道路が完全に連結される。そうすれば、ルソン島にもようやく近代的道路網が完成する。

232 12分の一を消化して

1月も終わりに近づき、瞬く間に今年の12分の一が消化されてしまいました。

今年のフィリピンでは大統領選挙を含む統一選挙があります。

6年に一度、悪徳政治家どもが民衆から掠め取った預貯金を一斉に吐き出す好景気が期待される年なのです。

既にTVやラジオでは正副大統領選候補や上下議員候補の宣伝合戦が盛大に繰り広げられております。

昨年は2連続大規模台風の襲来と世界景気の後退で辛酸を舐めたフィリピンですので、市民は皆不景気を吹き飛ばすような変革を期待しています。

何かが起こるでしょうか。

記事検索
プロフィール

manila_no_kaze

タグクラウド
QRコード
QRコード
  • ライブドアブログ